誰にでも簡単にできる医療體操
足助式医療體操(通称・足助式体操)は基本的に、
寝た状態で、ゆっくりと両手足を伸ばしたり、足首を回して動かしたりする運動です。
ですから、運動をするために、わざわざ移動する必要もなく、
朝起きてすぐ、あるいは夜寝る前に、寝床で気軽に体を動かすことができます。
「寝たまま、両手足を伸ばしたり、足首を回して動かす"だけ"」
と思うかもしれませんが、
15分間、ゆっくりと丹念に、頭の先から足の先まで意識して体を動かすと、驚くほど足首が回っていないことや、腰が連動してうまく回っていない事に気付くと思います。
テレビを見る、本を読む、パソコンを使う等、日常生活において、部分的に(とくに上半身)しか体を使っていない現代人の多くが、肩こりや腰痛に悩まされ、
その原因が運動不足によるものと自覚していると思いますが、
この「詰まり」こそが、血液やリンパ液等の流れを停滞させ、病の元となります。
そして、全身を使わないライフスタイルだからこそ、「自分の体は詰まっている」ということに、私たちは、なかなか気付きません。
足助式体操は、まずは、この「詰まり」に気付き、ゆっくりとほぐしていくことから始めます。
また、「寝たまま」運動ができるということは、歩くことができないほど体力が落ちている人でも、健康維持のための体操ができるという点でも、とても大きな意味があります。
そもそも、私たちは日頃当たり前のように立っていますが、実は、「立つ」という行為は全身の筋肉と骨格の絶妙なバランスの上に成り立っています。
しかし、普段私たちはそのことに気付かず、足を骨折などして歩行が困難になったときに、初めて「立つ」ことの難しさに気付くのです。
または、二足歩行ロボットが造られるまでに、どれだけ長い年月がかかったかを知れば、少しはそのことが分かるかもしれません。
それぐらい「立つ」ことは難しく、体に負荷がかかることなのです。
今、多くの体操は立った状態で行われています。
つまり、体操は「体力が回復してから」「<立つ>ことができてから」やるものという考え方が主流になっています。
そのような背景を持つ体操は、きちんと立つために、「筋肉を鍛え、筋肉を使っていく」ことがメソッドになっています。
しかし、血液が全身にうまく回らない体のまま、先に筋肉を使う運動をすると、心拍数が増え、肺や心臓に負担がかかってしまい、せっかくの体力回復のための運動も、病人にとっては(あるいは健康な人たちにとっても)苦痛で、辛いものになってしまいます。
これは、個人個人が健康増進を進める上でも、もっとも大切な「元気になろう」とする意欲を削いでしまうことになりかねません。
その点、足助式体操は、足の裏でしっかりと大地に「立つ」ことを目指した体操ですから、
寝たままの状態で、全身が緩やかにのびのびと動くことを感じながら、足首を少しずつ動かす……といった具合に、
筋肉を無理矢理動かすようなことはしません。
ですから、心臓や肺への負荷が少なく、体を気持ちよく動かすことのできる、まさにありとあらゆる人が継続して行える体操なのです。
足助式体操がそのような流れを組んでいるのは、この体操が、赤ちゃんが生まれて、立って、歩くまでの動作をお手本に作られていることが関係しています。
赤ちゃんは、手足をパタパタ動かして、そのうち、コロリンと寝返りをうつ。そして、ハイハイを経て、つかまり立ちをして、それから歩きますよね。
寝返りを打って、身体を捻ることによって腰の筋肉がしっかりしてくる。腰の筋肉がしっかりしてくると、今度は脊髄自体を支える筋肉がしっかりしてくる。次にお座りが定まってきたら、今度は「ハイハイしてみようかな」という感じになってくる。そうして、背中・腰・足の筋肉がしっかりしてきたら、「よっこいしょ」と立とうとする。
この赤ちゃんがやっていく動作の流れというものを、足助式体操では、とても重要に考えています。
赤ちゃんの動きを再現するという意味で、足助式体操は、人間の成長をもう一度たどる再生の運動とも言えるのです。
このように、私たちが「立つ」までには、様々な手続きを踏んでいるのですから、体力が衰えて動けなくなってしまった人にこそ、まずは赤ちゃんのように「立つ」準備をすること、
エネルギーを消耗するのではなく、エネルギーの流れを改善し、補填することが大切なのです。
足助式体操は、病人から健康人まで対象者が幅広く、誰でも無理なく長続きする運動です。
ぜひ、寝ながらにして自分の体と対話できる足助式体操を、皆さんに体験していただきたいと思います。
「私達の生活の中に多くの部分を占める寝る時間に、寝ながらできる運動があれば病の床に伏す病人にはもちろん健康な人にも役に立つ方法だと思う。
寝所を単に寝る所と見るか、錬る所と考えるかによって、道は二つに分かれる。前者は病人となり、後者には健康への門が開かれる。」
(『甦へる―—退行性変化調整法』足助次郎著,大盛堂書店)
「なるほど。<寝たままで、足首を動かす>のは確かに簡単だし、誰でもできるだよね。でも、なぜ寝たままの姿勢で、体にとって効果的と言えるのか、根本的なところがよく分からないなぁ。」
そう思われた方がいらっしゃったかもしれません。
それを説明するには、この体操を考案された足助次郎先生のお話をしなければなりません。
この足助次郎先生は、凄いのです。何しろ、自ら考案した治療法が合っているかどうかを確かめるために、わざと癌細胞を作るような生活を送り、実際に癌が出来たら、その治療法で癌を治してしまいましたから(『癌を作ってみた話 ―退行性変化整調法第七集——』足助次郎著, 大盛堂書店)。
詳しくは、また次回更新にてお伝えします。