足助式体操の成り立ち
足助式医療體操(以下、足助式体操)は、寝たままでできる体操です。
この「寝たままでもできる体操」という発想は
赤ちゃんの頃から体が弱く、脊椎カリエス、腸閉塞など60余りの病気にかかり、
長い時間を寝床の上で過ごしてきた、足助次朗先生の「起きたい」「起きなければ」という切実な願いから生まれました。
医師の指示通り、ありとあらゆる薬を飲み、「絶対安静」の闘病の中、
「病気とは自由に動けぬ時の副産物である」(『甦へる―退行性変化調整法』足助次朗著,大盛堂書店)
つまり、動かないからこそ病になる、ということに気付いた足助先生は、
あんまや鍼灸を始めとする東洋医学と西洋医学を学び、
病は、老化(退行性変化)から生まれ、
特に、血や酸素、栄養の製造工場である腸活動の異変こそ、全ての不調の元である
という結論に達しました。
そして、それら病の元となる体の退化を整える方法の一つとして、
足助式体操(退行性変化調整法)を考案し、長年に渡り、病に苦しむ人に指導してきたのです。
①「退行性変化」を改善すること
さて、「退行性変化」という聞き慣れない言葉が出てきました。
退行性変化とは、簡単に言うと「老化」のことです。
「老化」と言っても、年齢を重ねることによる自然な老化現象と、
運動不足や病気による急激な老化現象があります。
特に、足助先生は、この急激な老化現象に着目しました。
例えば、「体内年齢」という言葉をよく耳にすると思いますが、
この「実年齢」とは意味の違う言葉があるように、
私たちは、皆同じように、年老いていくということはありません。
一日中同じ姿勢のまま、体の一部しか動かしていない人と
ハイキングやランニングをして活発に動いている人とでは
若々しさが違うように、どういう環境で、どのくらい体を動かしているのかということが
「老い」と非常に関係してきます。
人間の体は、600兆もの細胞で出来ており、
日々、ある細胞は死に、ある細胞は生まれていきますが、
運動をしていない体、つまり、
筋肉や臓器、神経が硬くなり、血液や老廃物の流れが停滞している体は、
細胞の生まれ変わりがうまく進みません。
この細胞の再生の停滞が、年齢以上に体が老化する原因であり、
退行性変化と呼ばれるものです。
そして、それら細胞の劣化により、病が根付くのです。
足助先生は、この退行性変化による細胞の劣化に着目し、
健康な人にはその維持を、病に苦しむ人には、その改善をと
寝ていても、体のすみずみまで動かすことのできる運動を考えました。
②「腸」を整える
また、体のさまざまな部位の中で、特に腸を動かすことが大事だ
と足助先生は言っています。
足助先生が病で目も見えず、耳も聞こえなくなった時、
指圧師から腸の固さを指摘され、腸を中心とした指圧により
見えない・聞こえない、その他の体の不調が治ったこと、
また、数多くの大病を患っている人のお腹を触ると、
総じて石のように固く、変形してしまっていることから、
「<腸>の運動法なしに真の健康は考えられない」
という結論に達しました。
体を作っているのは、私たちが口にする食べ物ですが、
その食べ物から皮膚になったり、血液になったり、筋肉になったりする、
ありとあらゆる細胞の元となる栄養(酵素)を作っているのは、腸です。
つまり、腸は、体の再生の要、エンジンと言えるのですが、
ここに萎縮や硬滞が見られると、
体の細胞の劣化、つまり退行性変化に繋がります。
この腸の吸収能力を整えない限りは、
いくら良いサプリメントや薬を飲んでも、それらを十分に吸収しきれないので、
あまり効果がありません。
足助先生は、腸を完全に動かす方法を寝ながら研究し、足首を動かすだけで、
腸が動く、「快通快便運動」を含む100通りの運動を作りました。
実際に、癌で寝たきりの方の足首を回してあげると、
お腹がポコポコと動き出し、「気持ちよかったわ」と言って気持ち良さそうな顔になります。
この一言が、病人にとっても、そのご家族にとっても、どんなに大きなことでしょうか。
このように、足助先生は、
病そのものに対する一時的な治療ではなく、
病の元になり、病が育つ、細胞の入れ替えにこそ、
「健康に生きる」という活路を見いだしたのです。
足助式體操が身体に効く理由—まとめ
①赤ちゃんが立つまでの、再生の体操である。
②退行性変化(老い)の改善の運動である。
③腸の活動を高める。