東洋医学では、薬はすべて自然界の物を使うため、薬物として使用する物を“生薬(しょうやく:生きた薬)”と言います。西洋薬の“化合物“とは異なります。
生薬は自然界の陰陽の働きを持っており、それが個々に異なるため、それぞれの薬効に「五気六味」があります。
「五気」は寒・熱・温・涼・平 という薬性を表します。一般的には、温・熱の生薬は温裏散寒(体の内部を温めて冷えを去る)の薬効をもち、寒・涼の生薬は清熱瀉火(邪熱を去り体熱を冷ます)の薬効をもちます。平はあまり薬性の強くない物を表します。
「六味」は酸・苦(にがい)・辛(からみ)・甘・鹹(塩辛い)・淡という薬味を表します。「辛は散じ、酸は収め、甘は緩め、苦は堅し、鹹は軟ず」とされ、先人は長期に渡る生薬の使用経験から、味の異なる薬物は異なった治療効果を持つことを知り、六味の用薬理論を完成させました。
辛:発汗、行気作用;生姜など、甘:滋補・和中・緩急の作用:人参・甘草など胃腸を調和する物が多い、酸:収、渋に働き、咳を止めたり汗を調節する:五味子など、苦:降泄、燥、堅に働き、多くは体内の邪熱を去る:黄連・大黄など、鹹:軟堅に働き消腫などに使う:芒硝・牡蛎など、淡:滲、利に働き、水湿を去るものの多くがこれに属します。
このように生薬の「五気六味」を知った上で、個人個人の病状と体質にあわせた漢方薬を処方するのです。
この考え方は、食べ物にも共通です。化合物からは得られない自然の薬効も自然の恵みとして取り入れることが自然界に生きるためには重要です。