約20年前頃から日本においても心療内科が発展し、内科的・身体的異常の発症に心理学的または社会的要素が関係する病態の治療(心身症)に力が入れられるようになってきており、最近の不景気もあって年々その人口は増加傾向にあります。眠れない、食欲がでない、下痢を繰り返すが検査しても異常がなく過敏性腸症候群と診断されたなど、これらは神経症やうつ病といったはっきりした精神科領域の病態を持った上で内科的病態を合併している場合とは区別したもので、その病因が心理・社会的要因である場合心身症と分類されます。
西洋医学的には心と体を一度切り離し発展したのちに再度両者の関わりを医学的にしたもので、セロトニンをはじめとする神経伝達物質や脳内の活動分野の解析などから科学的解明が進んでいます。漢方医学的には古来より五臓六腑と言うようにその五臓のなかには肝・心・脾(小腸や膵臓機能)・肺・腎があり、心=心臓・こころ・精神の意味が含まれています。漢方医学では古来から現在まで一度もこころと体を分離して考えられたことはなく、常にこころは体の中にあるもの、体の機能に重要な一臓器と考えられ、また考察されてきました。
五月病とは日本の行事との関係もあり、四月に進学、異動など生活が変化することが多く、緊張を強いられた後にゴールデンウイークがあり、緊張と緩みのアンバランスから心身のリズムを崩してしまうというケースがよく見られます。
緊張や頑張りすぎはそのエネルギーを鬱積してしまう傾向にあり、それを漢方的にはエネルギー=気、エネルギーの鬱積=気滞と表現します。エネルギーの停滞は熱量の停滞となり、身体においても熱性の変化となりやすいのです。また、“熱”(体温とは違う)は上方へ行く傾向にあるためイライラ・カッカしやすい、寝付けない、微熱が続き疲れやすい、頭痛、ほてりなどは上半身に熱停滞がおこりやすくなっているための変化です。また、漢方的に冷えがあったり虚弱な体質の場合はエネルギーが下へ廻りにくくなり下痢や腹痛、だるさなどという症状になったりもします。
春は草木が芽吹き、天からの陽のエネルギーを感じ取り伸びやかに身体へエネルギーを送る季節であり、特に肝(=木)・心(=火・太陽)は重要な臓器です。春伸びやかになる肝が緊張しすぎるとイライラ・生理不順・肩こりが起こりやすく、心に負担がかかるとこころの太陽が照らなくなり憂鬱感や情緒不安定、不眠、動悸などがあらわれます。
生活リズムを整える、睡眠を充分にとる、バランスの良い食事をとる、頑張りすぎないなど五月病にならないための注意としてあげられますが、いったん偏ってしまった体の状態を漢方的に観察し、気の流れや漢方的五臓を調和する方法・漢方的理論はきっとあなたのこころと体にうなずきを与えてくれることと思います。
薄荷・紫蘇などは生薬のなかでも食品として一般に手に入りやすく使い易い薬草です。ミントティーや紫蘇などの軽い芳香性の食品は気を廻らせることに役立ってくれます。