【 古来から親しまれてきた「お粥」 】
中国では地域によって違いはありますが、特に朝食にお粥を日常的に食べる習慣があり、例えばその日の体調に応じてお粥のメニューを変えるなど、「食」によって体の調子を整えることが一般的に行われています。
日本では奈良や和歌山に「朝粥」の伝統が残っており、現在でも寺院などで実践されています。そもそも、中国から伝来した仏教とお粥の関わりは深く、中国の古い仏典には、お粥を食べる利点として、「顔の色つやを良くし、体力をつけ、寿命が延びる。また、消化が良いため体に無理な負担がかからず、風邪を予防し、便通が良くなる」などと記しています。
中医学的に見ても、お粥は「後天の精」(栄養)を作りだす「胃腸」を守る、養生食の基本となるものです。病人食としてはもちろんですが、胃腸を守り、元気でいるために、日常的に食べて頂きたい食事です。
ここでは、日常的に食べることができ、養生に適していてしかも手軽なお粥をご紹介します。
【 中国の代表的な養生粥「蝋八粥」(ろうはちがゆ) 】
中医学では、冬は「睡眠を十分に取り、体力のつく食事をし、春に備える」季節です。
この考えに基づいて、「蝋八粥」は、旧暦の年末(12/8頃)、体力をつける為の養生粥として、食べられるようになったのです。
蝋八粥は、もち米の他に大体8種類位の具を使い、甘いお粥に仕立てたものです。甘いお粥は日本ではあまり馴染みのないものですが、薬膳では自然のほんのりとした甘味は胃腸を元気にすると考えられており、とてもポピュラーなものです。
使う食材は厳密には決まっておらず、その時身近にある穀類や木の実・野菜など体を温め養うものを中心に、食べる人の体調を考慮して選びます。
【「蝋八粥」材料を選んで作ってみよう 】
「体力」をつける為には、生命の源である「腎」を強くするもの、体を動かすエネルギーとなる「気」「血」を補うものが必要です。
もち米と下記の食材を選んでお粥を作り、最後に三温糖や蜂蜜で好みの味に甘く味付けします。
■体を養う様々な食材
(1)「腎」を補う
老化による様々な体の衰えを緩やかにし、生命力を高める
くるみ・ぎんなん・栗・ごま・くこの実
(2)「血」を補う
美肌・脳の働きを良くする・精神安定
レーズン・小豆・黒豆・落花生・松の実・なつめ
(3)「気」を補う
疲労回復・胃腸機能改善
もち米・うるち米・きび・山芋・さつまいも・かぼちゃ・蜂蜜・蓮の実
■手軽につくるポイント
(1)炊飯器を使う
お粥は少し手間がかかってしまうのが難点です。
最近は炊飯器でもお粥が炊けるものがありますので、利用してみてはいかがでしょうか。
いも類・豆類も一緒に入れて炊けば良いです。
(レーズンなどやわらかいものは炊きあがってから混ぜてください)
水加減などは好みがありますので、食材の具合を見て増減してください。
(2)栗は甘栗でもOK
栗は腎を養い気力をつける食材ですが、手軽には使いにくい一面もあります。
瓶詰の栗の甘露煮を使えば気軽に食べられます。甘栗でも美味しいです。
参考:きれいになれるお粥レシピ 成美堂出版編集部
参考:典座和尚の精進料理 高梨 尚之
参考:実用中医薬膳学 辰巳 洋
「国際中医薬膳管理師」福山真美代