中国では、古代から植物・動物・鉱物などを摂取する中で、その経験によって薬になるもの、食物になるものを選別してきました。
そして、その経験は様々な書物として纏められ、中国伝統医学の一部として今日に至っています。
例えば、西周時代には食医(栄養)、疾医(内科)、傷医(外科)、獣医という4つの宮廷の医職のうち、食医が確固たる地位を築いていました。
その後、春秋戦国時代に書かれた中国最古の医書「黄帝内経」には、食物を穀(穀類)・蓄(肉・魚)・菜(野菜)・果(果物)の4種に分け、これらをバランスよく食べることが養生に役立つとしています。
飽食の時代と言われ、食に困らない現代においても、偏った食事で健康を害してしまうことは少なからずあると思われます。
中国伝統医学における食事療法である薬膳の定義は、その人の体質・体調・季節・風土に応じて食材を調理し、美味しく食べることを指し、これは現代においても最も重要なことではないでしょうか?
薬膳の理論において、食材は大きく分類すると3つの性質に分けることができます。冷やす食物とは、食材そのものに体を冷やす性質があり、温める食材には同じく体を温める性質があり、どちらでもない食材は、特に冷にも温にも偏らない性質があります。
冷やす食物
例:トマト・茄子・キュウリ・西瓜・冬瓜・苦瓜・セロリ・竹の子・レンコン・メロン・バナナ・アロエ・カニ・シジミ・アサリ・タコ・ハモ・豆腐・緑茶
これらの食物の性質を「寒性」と呼び、主に春~夏に多く取れる食物・貝類等がこれにあたります。
温める食物
例:唐辛子・胡椒・シナモン・ターメリック・クローブ・生姜・葱・玉ねぎ・らっきょう・ニンニク・紫蘇・エビ・サケ・ウナギ・羊肉・鶏肉・ニラ・くるみ・黒砂糖・さくらんぼ・桃・ライチ・栗・紅茶
これらの食物の性質を「温性」と呼び、主に香辛料・肉類・辛みのある野菜等がこれにあたります。
どちらでもない食物
例:米・豆類・とうもろこし・ジャガイモ・さつまいも・キャベツ・カリフラワー・シイタケ・いちご・ぶどう・いちじく・りんご・カツオ・サバ
これらの食物の性質を「平性」と呼び、主に穀類・いも類等の主食がこれにあたります。
この3つの分類を見てみると、例えば、夏が旬である西瓜は夏の暑いさなかに食べると体の熱を清め適度な水分補給となり(体を冷やすことにもつながるため、中国では立秋以降は西瓜を食べるなといいます)、香辛料たっぷりのカレーライスを食べれば汗がでて体が温まる・・・など、私たちが当然のように感じている事が食物の性質であり、「薬食同源」の考えかた(日本では「医食同源」とも呼びますが)に基いて、普段食べている食物の性質に偏りがないか見直し、旬のものを取り入れるなどの工夫も必要なのかもしれません。
「国際中医薬膳管理師」福山 真美代