2010年7月12日
財団法人大阪漢方医学振興財団は、創立25周年を迎え、昨年12月「漢方・健康フェア」を開催、多くの方々から賞賛をいただきました。
本年3月27日に第2弾として中国成都から盧崇漢先生(成都盧火神扶陽中医館館長、前成都中医薬大学教授)をお迎えし「学術講演会・日中医学交流会」を開きました。
当日は全国から90名もの中医学医師と漢方薬専門家が出席、会場は熱気に包まれました。
参加者から"大阪で火神派の重鎮、盧先生の話が聞けて、質問までできるとは"の声も聞かれ、日中医学交流は予定していた時間を超えて熱い質疑応答が続きました。
漢方医ら約100人が集う 熱気に包まれた会場 東京、広島などからも
火神派は中国の中医学派の一つで"陽気を重んじる(腎陽を重視)"を特色とし、ここ数年、新聞、雑誌、専門書などで取り上げられ大きな話題になっています。
開祖は清代の鄭欽安。
中医学の古い歴史に比較すると新しい学派で、附子、桂枝、乾姜など温熱薬の使い方に特徴があります。
日本でも様々な病気に火神派の理論が応用されており、今回の交流会でも熱心にメモをとる真剣な参加者の姿が会場のあちこちで見られました。
質問する伊藤先生と小髙先生
日本を代表する漢方医のお二人に、会場を代表していただき"火神派による漢方治療の現状"について話し合っていただきました。
日中において異なる考え方も披露され、会場が息をのむほど活気ある意見交換が繰り返されました。
陰陽の考え方こそ森羅万象のものさし
"陽気を最大限重んじることと陰陽の調和が火神派理論の根本です"と話す盧先生。
盧先生は火神派開祖・鄭欽安の弟子、盧鋳之の孫にあたる方で、今日の中医学会火神派において中心的役割を果たすリーダーの一人です。
大いに盛り上がった懇親会
講演会終了後、会場を移して懇親会が開かれました。
会場の話題はやはり火神派。
治療効果が大きいことや応用がきくこと、作用の強い薬を自在に使いこなすことなど、参加者が日頃体験している話が次々に披露され会場のムードは非常に盛り上がりました。
謝辞を述べる中本理事長
"今、中国の医学会で一番注目されている火神派を代表する盧先生をお招きし、実り多い日中医学交流を実現することができました"と謝辞を述べる中本理事長。
陰陽学説の重要性
講演が始まるとまず廬先生は"易経"や"黄帝内経"の言葉を引用して陰陽学説の重要性について話されました。
具体的には、陰陽学説こそ世界の森羅万象を説明する最も基本的な"ものさし"なのだという考え方です。
先生のこの考え方に対する認識について解説されました。
陽気の重要性
次に廬先生は、陰陽の関係における陽気の重要性について話をされました。
当日の話は大部分がこの話でしたが、ここでは大きく3つに分けて先生の講演要旨を紹介します。
【陰と陽は対等でない】
(1)陽が主であり陰は従属するものであること
陰陽学説では世界の全てを
"陰と陽"に二分し、両者がバランスをとることで世界は成り立っていると考えます。
つまり世界が成り立つためには陰も陽も大切なわけです。
しかしだからといって両者の関係は対等ではありません。陰と陽の間には
“陽が主導的な役割を果たし陰はそれに従属する立場”という関係があるのです。
【陽が弱ると陰という物質も減る】
(2)陰は陽から生まれること
そして陰と陽の間には、さらに
"陰(有形のもの)は陽(無形のもの)から生まれる"という関係があると考えます。
例えば人間で言えば
"生きていくために基本的物質は全て陽気の働きを通して作られる"ということです。
つまり陰陽の間には
"陽が主導権を握っている"という関係だけでなく、さらに
"陽が弱ると陰という物質も減ってしまう"という関係があるのです。
【全ての不調の原因は陽気の弱り】
(3)全ての不調は陽気の弱りが原因
上記の(1)(2)で紹介したように
"とにかく陽気が重要である"という視点で陰と陽との関係を捉えていくと最終的には
"全ての鍵は陽気が握っているのだ"という考えに行きつきます。
すると次には
"全ての不調は陽気の弱りが原因である"という考えにも行きつくことになり、これが火神派の認識の出発点とも言えるでしょう。
【陽気を傷めるもの】
人が元気でいるためには陽気が盛んでなければいけません。
しかし現代社会には陽気を消耗させる様々な要素があふれています。
盧先生はこうした陽気を傷める原因を8項目に分けて紹介されました。
また陽気が傷んで陽虚となった場合の弁証の要点についても話されました。
【扶陽について】
盧先生は扶陽法の価値は病気の治療だけにあるのではないと強調されました。
では他にどんな価値があるのかというと、それは養生法としての価値です。陽気とは生命を支える力です。
だから普段から陽気を強めておけば多くの病気の芽を事前に摘み取ることができるのです。