“葛根湯医者”という落語があります。
どんな症状にも大真面目に「それは大変ですなあ・・・葛根湯を出しましょう。」というのです。多分昔から万能薬とされていたのでしょう。
11月中旬から日に日に冬らしい寒さを感じるようになりました。
漢方的概念の六淫の中の“寒”の季節です。
また、冷たい北風とともに寒さを感受するため、“風寒”となり、“風”を伴うことで“寒”がより体表に影響しやすくなります。
風寒の邪が太陽経という経絡に感受しやすいことから特に体表項背部に寒さや“こり”という症状を起こします。
葛根湯は桂枝湯からつくられたもので、桂枝湯に麻黄・葛根を加えたものです。
麻黄は毛穴からの皮膚呼吸を促すことで“風寒”に犯された皮膚から寒さを排除するのを助けてくれます。
葛根は吉野葛で代表される葛です。胃腸を潤すことで津液(しんえき)という潤いを筋脈に届けます。
これらにより寒気は緩み本格的にかぜをひきそうであった場合は軽く汗をかくことで治っていきます。
かぜの時や胃腸の調子が悪く食欲のないとき粉末の葛を湯でといて食べるのもこのような意味があるのです。
しかし、やはり葛根湯は誰が飲んでも大丈夫というわけではありません。
発汗効果があるため、寒気はするけれど汗ばむ人や体の弱い方、お年寄りは葛根湯により発汗しすぎて虚脱感がでることがあります。
また、麻黄の成分でエフェドリン効果のため前立腺肥大の顕著な方は一時排尿困難となることもありますので注意が必要です。このような場合は桂枝湯がよいでしょう。
葛根湯は冷えて循環が悪く肩がこる方にも効果的ですが、肩こりには代謝が悪い、瘀血(おけつ)など他の原因もありますので思い込みで服用しないようにしてください。
“葛根湯医者”にならないよう上手にかぜを予防しましょう。