日本の花粉症は主にスギによるものが多く、この季節になると、ニュースなどで黄色い花粉を煙のようにまき散らす風景が映し出され、映像を見るだけでもくしゃみが出そうになる人もおられることでしょう。ヒノキもスギと共通抗原を有することからヒノキアレルギーも年々増加傾向にあります。季節的には、スギの次にヒノキそしてカモガヤなどのイネ科と夏になるまで時期をずらして花粉が飛び交います。しかし、近年では花粉だけでなく、排気ガスを代表とする大気汚染物質や、中国大陸から飛散してくる黄砂などと花粉が交叉反応をおこすため、体への刺激性は花粉のみの時より数倍にもなるともいわれています。
東洋医学的には花粉も“外邪”であり六淫の中の一つの“風邪”と考えられています。その風邪が体質と絡み合い個人個人特有の症状となります。たとえば、もともと冷えやすい体質の方は体内に冷えた水分が蓄積しているため透明なサラサラした鼻汁がでやすくなります。また、熱をこもらせやすい方・・・例えば過労や疲れやストレスなどがあり口の粘りや目の充血をおこしやすい方は目の痒みや黄色い粘調な鼻汁になりやすい傾向にあります。
この他、東洋医学的には慢性的に起こりうりうる個体内の陰陽バランス変化によっても花粉の量に関係なく花粉症がひどく出る年とそうでない年が生じたりします。過労などは“陰”(体内の津液と言われている水分や血液分など体細胞の必要な栄養分)を消耗する傾向にあるので乾きやすく熱っぽい症状(眼痒、眼の乾燥、喉のイガイガ感、鼻閉など)が現れやすく、生活習慣が体内を冷やしやすい傾向にあったり、体質的に冷えやすく代謝の悪い場合は“陽”(体内の代謝や温陽に必要なエネルギー)が弱い傾向にあり鼻汁がさらさらと、くしゃみもひっきりなしに出るということになりがちです。
東洋医学的には、現時点のつらい症状を改善に向ける方剤の使い方と、体質を改善し花粉にさらされても体内の水分や熱分が異常反応しないよう体内環境を整える方剤の使い方があります。後者はいわゆる“体質改善”と呼ばれます。花粉症が辛い方は、体内環境が整っていない場合があるので、その他にも不調が起こりやすいことが多いと考えられます。
来年のことを、または将来の体を考え、体質改善をお勧めします。
近年、漢方薬もエビデンスと言って効果の評価が客観的に解析されたり、実験的科学的に漢方薬の効果の確認がすすんでいます。アレルギーで、特に注目されているのは小青龍湯です。これは胃腸が冷えやすく鼻水や咳・痰の出やすい場合にむいています。また、口や目が乾きやすく、鼻閉をおこしやすい場合には辛夷清肺湯などがあります。