東洋医学的には“春”は“青”、その特性は“木”に表され、方向は“東”、五気(風・暑・湿・燥・寒)では“風”に、臓腑では“肝”にあたり、情志では“怒”をおこし、目にひらくと言われています。
長い冬のあと一日が始まるように、東から太陽が昇るように“春”が訪れ、草木は芽吹き始めます。“風”の季節でもあり、風にのって花粉やウイルスなども運ばれ“風邪(ふうじゃ)”と表現されます。芽吹く季節になると沈黙の冬とは違い、体の代謝・発散のエネルギーが活発になってきます。そのため体質が敏感な方は1月下旬頃から変化を感じ始め、アレルギー体質の方などは体の外側に発疹があらわれたりします。また、ここに花粉や黄砂など“風邪”が関与したり、春野菜のたけのこ、わかごぼう、ぜんまいなど勢いのある、あくの強い野菜などの摂取により一層発散のエネルギーが亢進し、アトピー性皮膚炎の悪化を招くこともあります。
また、感じる“こころ”も五臓に関与しており、“こころ”で感じてから考え、決定し行動するまでの過程に五臓を流れる“気・血”が深く係わっています。特に“肝”は人の本質的な感情をあらわし、特に“怒り”に深く係わり、「カッとなる」「イライラする」など無意識の感情発現をします。
日本では春は環境変化の多い時期です。“肝”の“気”が盛んになりやすい季節に緊張したり、“気”を使うこと、ストレスをかかえる機会がふえると“肝の気”が増したり停滞したりしやすくなり無意識にイライラしやすくなるのです。“肝”は“木”にもたとえられるとおり木が枝葉を伸ばし生長するように、“肝の気”も停滞することなくのびやかに流れるべきなのです。つまりうまく発散するべきなのです。
“肝の気”が強く出過ぎると『怒りっぽい』状態になり、目の充血や頭痛、高血圧の原因にもなります。“肝の気”が停滞すると『抑鬱的』になり、息苦しくなったり肩こりや胃腸の停滞感が出現します。特に“気”の停滞感は“気滞”と表現され様々な身体症状を引き起こすだけでなく『五月病』を導きかねません。発散とは「何をすべきか」ではなく、木の芽が芽吹くように「心地よいのは何か」を自分なりに見つけることが大切です。
心身ともに調和を崩してしまったら、四逆散、柴胡加龍骨牡蠣湯、加味逍遥散などを使います。