【 「おせち料理」のいわれ 】
おせち=御節と書かれ、元々元旦や季節の変わり目にあたる五節句(正月七日、三月三日、五月五日、七月七日、九月九日:明治六年に廃止された)に神様にお供えする為のものでした。
それから、節句の中でもお正月の料理をおせち料理と呼ぶように変化していきました。また、庶民の生活が豊かになるにつれ、おせち料理の内容もお供えのような質素なものから、様々な食材をつかった料理へと変化し、五穀豊穣・家内安全・子孫繁栄の願いを込めてそれにちなんだ食材を使うようになりました。そして、普段は忙しくしている主婦も三が日はゆっくり休めるように保存のきく料理を作りました。
【 薬膳から見た「おせち料理」の効能 】
それぞれのご家庭や地方によっておせち料理は千差万別だと思いますが、ここでは代表的なおせち料理の食材の効能についてご紹介します。
■ 黒豆
効能・・・去風・利水・滋陰・補血・活血・解毒
帰経・・・脾・腎
*帰経・・・その食材が主に作用する臓腑のこと
丈夫・健康を意味する言葉「まめまめしく」にちなんで食べられるようになった黒豆ですが、薬膳の効能としては、体内の余分なものを排出する働きがあるため、むくみやそれに伴う関節の痛みを緩和すると考えられています。また、体内の潤いや血液を補いながら巡りを良くし、消化器・腎機能に特に働きかけます。豆類は腎臓の形と似ている為、腎機能に良いと言われています。薬膳では、臓器の一部と良く似た形のものや、動物の同じ部位を食べることで効果があると言われているものが他にもあり、例えば、胡桃は脳の形と似ている為(?!)頭の働きが良くなる効果があるとも言われています。
■ 海老
効能・・・補腎・壮陽
帰経・・・腎・肝・脾・肺
腰の曲がったおせち料理の海老は、その姿の通り、長寿を願ったものです。薬膳の効能としては、腎機能を高め、体内の陽気(エネルギー)を盛り立てる働きがあります。まさに、薬膳でも「長寿」の食材です。
■ 昆布
効能・・・消痰・軟堅・行水・消腫
帰経・・・肝・胃・腎
「喜ぶ」にかけた縁起物として使われますが、薬膳の効能としては、体内の痰や脂肪など余分な物の固まりを軟らかくし、体液の流れを良くしながら体外へ排出する働きがあります。また、肝機能・胃・腎機能に特に働きかけます。
*痰・・・咳と伴にでる痰だけでなく水分代謝の低下から生じた体に不必要な粘調な水分のたまり
■ 栗
効能・・・補脾・止瀉・補腎強筋・活血・止血
帰経・・・脾・胃・腎
その黄金色の様子から、お金にかけた縁起物として栗きんとんにも使われますが、薬膳の効能では、下痢や出血を止め、腎機能を高め、骨や筋肉を強くする働きがあります。また、消化機能・腎機能に特に働きかけます。
【 冬は「腎」を養う季節 】
以上の四つの食材には、「腎」に働きかけるという共通点があります。薬膳では、冬は「腎」の機能が盛んになる季節であり、腎のエネルギーを養うのに適しています。また、「腎」は生命の根本・先天の精などと呼ばれ、「腎」を補うことは生命力を保つ、つまり現代で言うところのアンチエイジングにつながると言われます。また、「腎」を豊かにすることは、骨や歯・髪の毛の健康を保つことになり、このことからも、老化防止に一役買うことがわかります。一年の健康を願って食べるおせち料理には、薬膳的にも健康になる料理ですので、是非食べていただきたいです。
* 腎・・・「腎臓」だけではなく、腎臓・膀胱の機能・骨盤内臓器(子宮・卵巣)機能・内分泌系・中枢神経系の一部を司ると考えられています。
- *先天の精・・・「腎」に蓄えられている、生まれ持った生命力、エネルギーのような意味
「国際中医薬膳管理師」 福山 真美代