【 「紫蘇」という名前 】
紫蘇という名前の由来をご存知ですか?
中国・後漢の名医華陀(かだ)が、カニによる食中毒で死にかけていた若者に紫色の薬草を煎じて飲ませ、蘇らせたという中国の古い物語からと言われています。紫蘇には魚介類の消化不良を防ぐ効能があります。お刺身の「つま」として用いられることにはきちんとした意味があるのですね。
【 赤紫蘇と青紫蘇 】
青紫蘇は「大葉」とも呼ばれ野菜として、赤紫蘇は梅干などの漬物の色づけ・風味付けとして用いられます。赤紫蘇を乾燥させたものは漢方薬としても用いられます。紫蘇としての効能はどちらも変わらないと言われています。
【 旬 】
6~10月 鉢植えで比較的容易に栽培できるので、青紫蘇が自宅にあれば料理にすぐに使えて便利です。
【 性味/帰経 】
温辛 / 肺脾胃
体を温め、辛の性質である発散・行気(気を巡らせて滞ったものを散らす)します。特に肺・脾・胃にその効果が反映されます。
【 効能 】
(1)発表散寒
発表とは、体の内に入ろうとする邪気(悪いもの・・・ウイルスなど)を体の外へ散らす働きです。散寒とはその邪気の種類の中でも「寒邪」を散らします。
ぞくぞくと寒気がして風邪を引きそうな状態の時に使えば、体を温めて寒邪を外へ追い出します。
(2)行気寛中
行気作用によって、気の流れを良くします。「中」とは胃腸の事を指し、「寛」は、症状をなだめる、和らげるといった意味があります。胃腸の気の巡りが悪くなり、吐き気やお腹の張る症状を和らげます。
(3)解魚蟹毒
魚介類を食べるときに一緒に摂ると消化不良や食中毒の予防になります。お刺身を食べるときに紫蘇が付いていたら積極的に食べると良いですね。
(4)行気安胎
(2)の行気寛中作用と安胎作用で、妊娠中に胃腸の気の巡りが悪くなった状態にも用いることができます。特に妊娠中の悪阻に生姜や陳皮(みかんの皮を干したもの)と使用します。
【 効果的な使い方 】
(1)紫蘇と生姜・葱の味噌汁
風邪の引き始めにおすすめします。生姜や葱も紫蘇と同じように発表散寒作用があるため、一緒に用いると良いです。飲んだあとは軽く汗をかく程度まで体を保温しましょう。
(2)紫蘇茶
気の巡りが悪くなって起こる胃腸の張りと痛みを解消します。妊娠中の悪阻にも良いです。紫蘇(蘇葉)と陳皮3~5g程度を300cc程度の熱湯に5分ほど浸してお茶として飲みます。
又は沸騰した湯に入れて香りを損なわない程度に軽く煎じても良いです。これらの生薬は漢方薬局などで入手できます。陳皮にも胃腸の気滞(気が順調に流れずに停滞すること)を取る効能があります。
生の紫蘇だけでも効果があります。その際は3~5枚位をきざんで上記の方法で使用してください。蓋のついたポットで蒸らすようにすると香りを飛ばさずにすみます。
参考 中医臨床のための中薬学 神戸中医学研究会 編著 / 薬膳素材辞典 辰巳洋 主編