【 胡麻の力を取り入れよう 】
胡麻は古代から食べられてきた歴史ある食材で、体に良い食べ物ということをご存じの方も多いと思います。薬膳でも、胡麻は気力を増す、肝・腎を強める、肌を美しくする、毛髪を黒くする、筋骨を丈夫にする、便秘を治す、産後の乳汁分泌を促す等々の効果が知られ様々な形で利用します。胡麻はいろいろな料理に取り入れて気軽に食べられますし、もっと日常的に食べていただきたい食材のひとつです。
【 胡麻の歴史 】
胡麻はアフリカ原産で紀元前1300年頃から栽培されていた記録が残っています。インド・中国を経て仏教伝来とともに日本に入ってきたようです。ゴマ科の一年草で春に種子をまき、秋に収穫します。密教の修行に用いられる五穀(大麦・小麦・稲・小豆・胡麻)の一つに入っています。平安時代には傷の手当や灯油として使用され、その後、獣の肉を食べることができない禅宗の寺院では、たんぱく質が豊富なゴマを「胡麻豆腐」などいろいろと工夫して食べるようになったようです。
【 白胡麻と黒胡麻 】
江戸時代の「本朝食鑑」という書物では「黒胡麻は「腎」に作用し、白胡麻は「肺」に作用する。共に内臓を潤して血の流れをよくし、腸の調子を整える」(注)と言った意味の記述があるそうです。インドの伝統医学である「アーユルヴェーダ」では、白胡麻よりも黒胡麻の方がよりたくさん太陽のエネルギーを吸収するので効力が強いと言われています。
栄養価で比較するとあまり変わりがないようです。
(注)「腎」…腎臓やその機能、生殖器・ホルモンなどを含んだ概念。
耳や膀胱との関係が深い。
「肺」…肺やその機能を含んだ概念。皮膚や大腸との関係が深い。
【 冬の薬膳と黒胡麻 】
冬は腎に精(注)を貯金する季節といわれる一方、冬の寒さで「腎」を弱めやすい季節でもあります。冬は精を補いながら体を温める食品を多く食べ、腎を弱めないようにしながら、エネルギーを蓄えます。そして、春に十分なエネルギーを持って活動できるようにします。黒胡麻は精を補うので、季節でいえば特に冬に取り入れて欲しい食材のひとつです。
(注)「精」…生命力を維持するためのエネルギー。
【 胡麻の薬膳的効能 】
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滋補肝腎 養血益精 … 肝や腎を潤し、血を増やし体力をつける
肝と腎は特に精や血を貯金しておく場所にあたり、疲労や老化など体のトラブルが長期的に続くと精血を消耗して影響がでやすい場所です。黒胡麻は特に「肝・腎」を潤し体力をつける作用があるとされています。
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潤燥滑腸… 乾燥している場所を潤す。特に腸を潤す。
皮膚の乾燥や便秘に良いとされています。特に腸に潤いを持たせて便通を良くします。
【 食材の組み合わせで簡単薬膳 】
胡麻はそのままだと消化しにくいので、食べる前に擂って使うと栄養を効果的に吸収することができます。
(1)黒胡麻とくるみと蜂蜜
この組み合わせは肺と大腸を潤す作用が強くなるので、乾いた咳が出るときや、便が乾燥してでにくいときにお勧めです。
(例)擂りゴマとくるみ、蜂蜜を食パンやヨーグルトに加えて朝食の一品に。
(2)黒胡麻と豆乳と蜂蜜
この組み合わせも(1)と同じように豆乳に肺と大腸を潤し便通を良くする作用があるため、乾いた咳や便秘が気になるときにお勧めです。
(例)温めた豆乳にお好みの量で蜂蜜を入れて甘みをつけ、擂った黒胡麻か練りゴマを混ぜてホットドリンクとして。牛乳がお好きなかたは牛乳でも。
冷たいままだと蜂蜜が溶けにくい上、薬膳的にも冷たいものは胃腸の動きを悪くしてしまうので、必ず温めてください。
胡麻は脂質が全体の半分以上でほとんどが「不飽和脂肪酸」。コレステロールの排泄・動脈硬化を予防します。また、たんぱく質は必須アミノ酸を含み滋養強壮に良く、カルシウムが含まれ、たんぱく質とともにとりいれることで吸収率が良くなります。他には、ビタミンB、リン、鉄分などが含まれます。また、胡麻に含まれる「セサミン」は老化防止に効果的な「抗酸化物質」を含み、これが不老長寿の妙薬と古くからいわれてきた所以なのかもしれません。