2007年10月15日
若いスタッフと力を合わせて、大阪漢方財団をさらに意義のある財団に。
このほど当財団理事会で中本かよ(佳代子)先生が新理事に選任されました。
先生は内科がご専門で大阪市立大学、成人病センターで胃ガンの病理について研究され、当財団附属診療所医師としても18年間勤められた方です。
新理事長としての抱負、漢方の魅力などについて話を聞きました。
- 理事長にご就任おめでとうございます。
「理事会でご推薦いただき、お引き受けすることになりました。前任の伊藤先生にとても及ばないことは重重々承知していますが、若いスタッフとともに力を合わせてがんばって、伝統ある大阪漢方医学振興財団をさらに意義ある財団に育てたいと思っています。皆様のご支援をよろしくお願いいたします」
”患者さん第一主義を貫きたい”
- 運営方法は。
「新しい奇怪なことを求めるのではなく、むしろ医師としての原点に返って、”患者さん第一主義”を貫いて運営したいと思っています。患者さんが当院に来れるのは病気をお持ちだからで、その病気を治療することが私たちの最大の使命です。患者さんに喜んでいただくことが一番大切という姿勢で臨むつもりです。これまで漢方についていろいろ教えていただき、学んできましたが、それを最大限患者さんのために生かしてがんばるつもりです。
人間の体を小宇宙にとらえる中医学
- 漢方の魅力はどこにありますか。
「人間の体のからくりを見ほどくようなところが好きです。患者さんは”どこが痛い”とか”しんどい”とか訴えられますが、漢方ではなぜそうゆう症状がでてくるのか理論的に説明してくれます。昔ながらの理論ですが、何千年も生き残って今日に伝わっていること自体その理論が間違っていない何よりの証拠といえるでしょう。
人間の体を小宇宙に例えて細やかな観察眼でよくここまで精密に理論を構築したものだとものすごい魅力を感じます」
- 人間の体は小宇宙ですか。
「そうです。だから漢方では患者さんの診察室に入ってこられる足取り、顔色から始まり脈を見て腹部を触り眼の力、声の様子を聴き医師の五感を働かせて患者さんの体全体を診察して治療法を考えます。
西洋医学はよく、”木を見て森を見ない”と言われます。ガンならガンだけを見てそれを優先して治療するからです。ガンが一大事であることは間違いありませんが、体全体を小宇宙として考えると、ガンとともにそのガンに驚いて精神的ショックを受けているのも同じ患者さんの体であるわけです。また別の病気を持っておられることもあります。
中世学では症状が小宇宙である体のいかなるアンバランスから生じているかを探ります。人体のからくりを踏まえた上で病状を把握しようとするのです。」
- 漢方の方が理にかなっているように思いますが。
「私もそう思います。しかし、西洋医学には西洋医学の得意分野があります。そのことを忘れてはならないと思います。
例えば西洋医学には膨大な研究開発で到達した最先端医療技術があり、私たちがこれを利用しない手はありません。特に早期ガン発見。まだ患者さんが痛くも何も感じていないとき検査でガンを見つけます。症状がでてからでは遅いのです。見えないところを漢方を過信しているととんでもない間違いを犯すことになります。
私は双方の長所をミックスさせて患者さんの治療に当たることがベストと考えています。目的は患者さんが快復され元気に社会復帰されることであり、その道筋が西洋医学であるか漢方であるか、それは第二義的なことです。実際最近の医学界はそういう流れで双方を隔てていた壁はかなり低くなっています。漢方薬がなで効くかその解明も進んでいます」
- 漢方薬は長く服用して効き目が現れるという印象が強いのですが。
「確かにそういうイメージをもたれる方もおられます。しかしすぐ効く薬もたくさんあります。風邪で寒気を感じておられる方には即効薬をおだししています。
しかし生活習慣病のように長年の悪習慣が積もり積もって病気になった場合、例えば高血圧を数値だけガンガンと下げて”さあ治りました”というようなことはありません。じっくりと体質改善から始める方がいいのは常識で考えてもご理解いただけると思います。
漢方薬は常に患部だけでなく患者さんの体全体を診て処方されます。例えば、熱があった場合、西洋医学ではその原因が風邪でもはしかでも解熱剤を使います。しかし、中医学では体全体を診て熱の根本は何であるかを見定めて、場合によっては熱があるのに体を温めるという薬もお出しすることがあります」
難病が驚くほど早く治癒することも
- 熱があるのにさらに温めるのですか。
「もちろんいつもそうするわけではありません。舌の状態、脈の状態などを診て慎重に判断したうえでのことです。2、3年前にこういうことがありました。
”にきびだに症と言われたが一向によくならない”と言って患者さんが来院されました。西洋医学ではこんな場合、硫黄成分の液薬を塗るのが一般的ですが、この方には効かなかったようです。診ると赤くなっていてかゆみを訴えられます。私は漢方でいう真寒仮熱ではないかと考えました。簡単に言うと冷えのぼせです。体は陰陽が混じり合ってできていますが、陰でグッと固められて陽が入って行けない状態と診断したのです。そこでその方に体の内部を温める薬を処方しましたら一週間ほどで治りました。
体の内部の陰陽のバランスを整えることで自分の力で顔の熱をひかせたのです。速やかに効果が表れたので私の方が驚いたぐらいです。
顔が赤く熱を帯びているように見えているとき、体を冷やすのでなくさらに熱を加える薬を処方することは結構根性のいることでしたが、漢方理論が生かせたので今も鮮明に覚えています。この事例は学会でも発表させていただきました。」
趣味はボウ~っとすること(笑)
- 休日はどのように過ごされますか。
「ボウ~っとするのが好きなんですが、最近は忙しくてその時間がありません(笑)。ヒマを見つけると山に行きます。岐阜と福井の県境に父が残してくれた山小屋がありましてそこにブラッと行きます。その時が一番落ち着きますね。
遠くに白山連峠が見渡せて、最近では連休に行きましたがまだ白山は真っ白でした。川の流れがきれいで水芭蕉が美しくツバメが飛んで鶯が鳴いて桜が咲いて、本当にいいところです。自然の中の”人間”を実感できます」