『礼記』(中国古代の礼の規定およびその精神を雑記した書物)に「夫れ礼の初めは、諸を飲食に始まる」とあり、作法や習慣が飲食から始まっていることを明らかにしています。
食卓における作法は物質と精神が合体してできたひとつの形であり、文明の成果であり我々の生活や思想にも影響を及ぼしてきました。孔子(前551=前479頃)の時代では礼とは儒家の影響を受けた個人の行動規範であるとともに社会秩序であり具体的な行動規範でした。
最近では“個”を重視するようになっているため、堅苦しい“礼”は省かれるようになってきましたが、家庭内や職場、学校での共有できる食事時間も今一度見直すことで、言葉では伝えきることのできない“繋がり”を再認識できるのではないでしょうか。
お正月と言えば【おせち料理】ですね。【おせち】は【御節】と書かれ、もともと元旦や季節の変わり目にあたる五節句(正月七日、三月三日、五月五日、七月七日、九月九日:明治六年に廃止された)に、感謝や祈祷の気持ちを込め神様にお供えする為のものでした。そこから、節句の中でもお正月の料理を【おせち料理】と呼ぶように変化していき、庶民の生活向上とともに五穀豊穣・家内安全・子孫繁栄の願いを込めてそれにちなんだ食材を使うようになりました。
日本のお正月には我々の歴史から受け継いでいる文化・思想が残っています。“食”から感謝の気持ちや人と人の繋がり・秩序・思いやりを感じることができるのも日本文化の素晴らしいところです。科学的理論が重視される現代ですが、人間形成の根本である“食”を大切にする文化は継承したいものです。