一年で最初の節句を『人日の節句』と言い、一月七日に祝います。"七草粥を食す日"としてお正月最後の行事となっていますが、前漢時代(前206年頃~)の中国でお正月にその年の食の吉凶占いが始まったことに由来するようです。
正月一日には鶏、二日に狗(犬)、三日に羊、四日に猪(豚)、五日に牛、六日に馬、七日に人、八日に穀の吉凶を占い一年の豊作と無病息災を願いました。それぞれの日にはその動物を殺さないようにし、七日の人の日には邪気を払うため初春の野から摘んだ生命力豊かな野草を羹(あつもの:汁物)にして食しました。唐の時代には、人日の日には『七種菜羹(ななしゅさいのかん)』として七種類の若菜を入れた羹を食すようになりました。これが伝わり七草粥となったのだと考えられています。
これは太陰暦の一月七日で、太陽暦では二月にあたります。まだ雪の残る大地から青々とした若葉が除くとき、人々は春の訪れの喜びと共に力強い生命力を感じたのでしょう。
古来、宮中や神社でも人日の日に野草を摘む行事を"若菜摘み"と言い、万葉集や古今集などに歌われています。本来は若い女性が摘むとされており、若い生命力だけではなく日本の雅が感じられます。
明日よりは春菜摘まむと標(し)めし野に昨日も今日も雪は降りつつ 山部赤人(万葉集)
春の野に若菜つまんと来しものを散りかふ花に道はまどひぬ 紀貫之(古今集)