春、食卓をかざったタケノコは星祭りのころ青々とした竹となり、その竹林の姿は私たちを清々しい気持ちにしてくれます。年中を通して青々としていて真っすく伸び、節目正しいその成長の様からも清らかな気を伸びやかに巡らせるとして中国では蘭・梅・菊とともに四君子にあげられ慶事に用いられます。
食用とされる筍は主に孟宗竹(もうそうちく)ですが、その他真竹、淡竹(はちく)、千島笹(ねまがりざさ)も食べられます。特に淡竹は漢方薬としても使用され、正倉院の彫刻尺八や天平宝物の筆などは淡竹製とされています。
笹には解毒作用もあり、笹の葉寿司、笹団子などに昔の知恵が伺われます。神話では天照大神が天野岩戸に隠れた際、天宇受売命(アメノウズメノミコト)が天香山(あまのかぐやま)の小竹葉の束を持って踊ったとされており、今でも地鎮祭など神様をお祀りする時に用いられます。
旧暦五月に雨が降ったあと竹にたまった水を「竹精」といい、くすりを服用するのに用いたりシミがとれると顔に塗ったりしたようです。漢方薬では淡竹の皮をはぎ皮下の緑白色部分を竹茹(ちくじょ)といい気管支炎などに用います。
青々と清らかな気を放つ竹も中秋の名月の頃には水分が失われます。竹のもつ気品と神聖さをあらわした日本最古の物語「かぐや姫」も、その頃竹の精とともに天に昇っていくのでしょう。