東洋医学では生命のエネルギーを“先天の精”と“後天の精”に分けて、まずその根本を定義付けています。“先天の精”は両親から授かったもので、生命の誕生に関与しています。その“先天の精”を種火として維持し続けるために“食べる”ことを通じて“後天の精”を得、いわゆる五臓六腑にいきわたるエネルギーに転換し、日々の動作や思考、感情のコントロールをしています。
特に東洋医学で重視しているのは胃腸です。紀元前に書かれたとされる『黄帝内経』には「胃気が無ければ死ぬ」という内容があり、生命維持には食べる/食べれることが正気の維持に重要であるとしています。又、五行学説といわれる理論体系で人体の小宇宙を表しています。
胃腸は「脾」=土、「肝」=木、「心」=火、「肺」=金、「腎」=水とたとえられ、土(脾=胃腸)が全ての中心となり、土が無ければ成り立たないと考えています。即ち、木は土がないと生えない、古来の火は土でできたかまどで守られる、金は土の中から生まれる、水は土の中にとどまり蓄えられるというように、土で例えられる胃腸=脾は身体機能の中心的存在なのです。そして感情にも言及しており、脾は哀・憂、心は喜、肝は怒、肺は悲、腎は怖、驚の感情と密接に関わり、それぞれの臓器の失調はそれぞれの感情を害しやすいと考えています。
最近の研究で、腸内細菌に着目されるようになってから、ようやく東洋医学理論の胃腸の重要性が科学的に証明され始めています。“マイクロバイオーム”という考えはまさに東洋医学理論の裏付けとなり、またそれを発展させるものです。100兆個以上あると言われる腸内細菌が内臓機能を総括し、思考をも支配している可能性すらでてきました。感情のコントロ―ルをするセロトニンは腸内で約95%が産生され、迷走神経を通じて脳内に指令を与えるようです。
その反面、近代化から添加物や遺伝子組み換えなど食の変化も大きく、腸内環境に影響していると言われています。普通に食事をしていても、年間4㎏もの添加物を知らずに食べているのです。今、抱えている不具合も、将来のある子供の不具合も“後天の精”から根本を見直す必要がありそうです。頭(脳)でばかり考えるのはやめて、腹の虫の言うことにも耳を傾けてください。その方が心地良いかもしれません。